
世界には、地域に根付く伝統・慣習など文化の多様性を象徴する無形の文化遺産が数多くあります。UNESCOの前事務局長である松浦晃一郎氏(1999年〜2009年就任)は無形文化遺産の重要性を次のように説明しています。
『無形文化遺産は、長い時間をかけて世代から世代へと受け継がれてきた「生きた遺産」であり、有形の文化遺産と同じく人類にとって重要な文化遺産である。さらに、次世代につないでいく義務を我々の世代が担っていると言える。』
松浦晃一郎(2008)『世界遺産 ユネスコ事務局長は訴える』講談社 より抜粋

2006年1月20日、「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産条約)」(“Convention for the Safeguarding of Intangible Cultural Heritage”)の締約国が30カ国に達したことを受け、3ヵ月後の2006年4月20日に同条約は発効されました。
無形文化遺産保護条約の目的は、(a)無形文化遺産を保護すること、(b)関係のある社会、集団および個人の無形文化遺産を確実に尊重すること、(c)無形文化遺産が重要であり、さらに無形文化遺産に対する相互理解を確実に深めることが重要であるという意識を地域的、国内的、および国際的に高めること、(d)国際的な協力および援助についての規定を設けることとされています。
無形文化遺産(”Intangible Cultural Heritage”)は、人びとの慣習・描写・表現・知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間のことをいいます。世界遺産は建造物など形があり、動かないものであるのに対し、無形文化遺産は形にならない人間が持つ知恵や習慣などをさします。特に、次のような分野が無形文化遺産に含まれます。
- 口承による伝統及び表現(言語を含む)
- 芸能
- 社会的慣習
- 儀式及び祭礼行事
- 自然及び万物に関する知識及び慣習
- 伝統工芸技術 等
リストは以下の2種類があり、緊急保護リストが第1リストと位置づけられています。
緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表

人類の無形文化遺産の代表的な一覧表

2009年9月に行われた第4回政府間委員会(於:アラブ首長国連邦)では、危機リストに12件、代表リスト76件の掲載が決まりました。これで、世界では危機リストに12件、代表リストに166件、トータル178件が無形文化遺産に登録されたことになります。日本からは、代表リストに新たに13件が加わり、合計16件が記載されることになりました。(2009年9月現在)

条約の発効に先立ち、UNESCOは無形の文化遺産を保護するための事業として、世界の伝統的な文化の表現形式や文化空間を「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」として発表しました。この宣言は、2001年(第1回)、2003年(第2回)、2005年(第3回)の3回に分けて発表され、日本からは能楽、人形浄瑠璃、歌舞伎の3件が記載されていました。
2008年11月の第3回政府間委員会(於:イスタンブール)では、それまでの傑作宣言に発表された90件が「人類の無形遺産の代表的な一覧表」(代表リスト)にまとめて記載されることになりました。
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